アルミ鋳物、ブロンズ鋳物専門メーカーの傳來工房専務の橋本昇です。
北海道洞爺湖で7月7日からG8サミット(先進国首脳会議)が開催される。
最大のテーマはもちろん地球温暖化問題を中心とした環境問題。
その起点となったのは、もう10年も前になるがご存知、京都議定書を採択された
「地球温暖化防止京都会議(COP3)1997」だ。
当時この会議が行われたのが京都左京区宝が池にある「国立京都国際会館」。
《国立京都国際会館 1966 設計:大谷幸夫》
私が小学校4年の頃、完成した。
近くの小学校へ通っていたので初めて見たとき、
とてつもなく迫力を感じる建物だった事を今でも覚えている。
それから30年後、まさかこれを設計した建築家のお手伝いをするとは・・・
夢にも思わなかった。
《千葉市美術館内部さや堂ホール 1994 設計:大谷研究室 施工:清水建設》
《千葉美術館 1994 設計:大谷研究室》
この建築の中にさや堂ホールの建築が保存されています。
《さや堂ホール入り口》
この建築は、昭和2年(1927)建築家矢部又吉(1888-1941)の設計により
本格的なネオ・ルネッサンス様式の川崎銀行千葉支店として建設された。
大谷先生が千葉美術館の設計にあたり、この地にある文化財の完全復元を
担当された。
さや堂の名称の由来は、この文化財建築を曳屋工法で移動させ
また元の位置近くに戻された為、鞘堂(さやどう)と命名されたようだ。
今回、われわれ傳來工房は、この鞘堂となる元川崎銀行千葉支店内部の
ブロンズキャストの完全復元をお手伝いした。
《柱頭、柱脚:ブロンズキャスト 緑青発色仕上げ》
大谷先生が石柱の蛇紋とブロンズキャストの緑青模様を合わせろと
ムチャな難題を言われたのも今では懐かしく、良い思い出です。
《2F回廊意匠手摺:ブロンズキャスト 緑青発色仕上げ》
この手摺りは、繊細な意匠とディーティールを大谷研究室の皆さんと
傳來工房アトリエスタッフでかなりこだわって完成しました。
清水建設の皆さんにも大変親切にご協力いただき良い仕事ができたと思います。
《1F空調グリル:ブロンズキャスト 緑青発色仕上げ》
立体造型部分にも大谷先生の復元に対する熱い思いを感じます。
当時、大谷先生には原型立会いで
傳來工房京都工場にも来ていただきました。
小柄な痩せ型でなぜかいつも無表情でしたが、打ち合わせに入ると
モノづくり側の気持ちを汲んで話を真摯に聞かれる先生でした。
《余談》
今回のG8サミット開催地の本命は、京都だった。
しかし、警備の関係で伏兵の北海道洞爺湖に決まった。
平成17年に完成した京都御所内の京都迎賓館(設計:日建設計名古屋)も
その布石だった。
残念・・・しかし6月には外相会議が決まっている。
(もちろん、京都迎賓館のお手伝いをした。アルミキャスト棟化粧・外部赤外線キャストカバー)
《京都迎賓館晩餐室》
思い出したが
その昔、京都国際会館横の宝ヶ池プリンスホテル(設計:村野籐吾)建設も
当時の京都でのサミット誘致が目的だった話を昔聞いた事がある。
その時、京都らしい騒動があった。
比叡山の借景で有名な円通寺(えんつうじ)の庭に
プリンスホテルの上部が見え、ホテルの階建てが変更になったとか・・・
京都国際会館の向こうにかすかに
宝ヶ池プリンスホテル(現 グランドプリンスH京都)が見える。
(村野藤吾の代表作である箱根プリンスHを思い出すような意匠だ)