意匠アルミ鋳物専門メーカーの京都の傳來工房専務橋本昇です。
来週末には9月に入るというのに、厳しい暑さが続いていますが
朝夕には秋の気配を感じる日も少しづつ増えてきました。
今回は、少し涼しげな旋律が聞こえそうな傳來工房の仕事の紹介です。
住友生命が60周年を記念し、住友生命OBPブラザビル内に
クラッシック専門のコンサートホールの建設を計画された。
コンサートホールの名前は、江戸時代から続く住友家の屋号(やごう)
「泉屋(いずみや)」から《いずみホール》と命名。
設計:日建設計
ホールデーター: 821席(1階713席、2階108席)
このホールの計画にあたり、世界でもトップクラスの音響評価である
《ウィーン学友協会大ホール》をベンチマークとして、
超一流の音響のために内装意匠・材質はもちろん、
照明シャンデリアまで音響効果と意匠の両立を徹底された。
われわれ傳來工房がお手伝いしたのは、
2階のバルコニー席前の透かし手摺りと
意匠腰パネルをアルミ鋳物で鋳造製作した。
《2階バルコニー席 鋳作施工:傳來工房》
・アルミ鋳物製透かし手摺り
・アルミ鋳物製意匠腰パネル
このいずみホールにアルミ鋳物採用された理由の少し説明を・・・
シューボックス型のコンサートホールの2階に位置する
バルコニー席の音響効果を確保するため、
シンプルですが気品を感じさせる菱格子の意匠をアルミ鋳物で鋳造しました。
《透かし菱格子手摺り 材質:アルミ鋳物 鋳作施工:傳來工房》
《透かし菱格子手摺り 材質:アルミ鋳物 鋳作施工:傳來工房》
この透かし格子により音響効果と同時に
2階観客席からの視界範囲と安全性を確保できました。
そして、傳來工房として特にこだわったのは、
2階観客席のコーナー席の手すりと意匠腰パネルのR加工です。
通常、R面は専用の深い型を作るか、加工で曲げるかの選択ですが
コストアップに繫がる型費を抑えることを考え、加工を選択しました。
しかし、肉厚7mm以上あるアルミ鋳物はこんな深いR面は通常不可能です。
そこで傳來工房としてアルミ鋳物の地金の合金配合を微妙に変えながら、
熱と荷重によるR面加工に挑戦しました。
いずみホール竣工後、当時設計部長をされていた日建設計の与謝野さんから
お褒めの言葉を頂戴し、職人達と一緒に大変喜んだたことを思い出します。
品位高い、素晴らしい仕事のお手伝いが出来たことは、
傳來工房の誇りであり、私にとってこれからの仕事の大きな励みです。
ありがとうございました。
《余談》 お時間があれば・・・
このいずみホールでお世話になった与謝野部長や与謝野グループの皆さんに
当時よく傳來工房にお声を掛けていただき大変感謝しております。
その与謝野部長のおじい様とおばあ様が
歌人の与謝野鉄幹と与謝野晶子だったとは・・・!
当時,お会いするといつも「ものづくりの気持ち」を汲み取っていただき、
親切に丁寧にお話いただいたことを思い出します。
益々のご活躍をお祈りしております。 感謝