8月16日の大文字の送り火が終わり、
京都もようやくお盆前の猛暑から一服しております。
アルミ鋳物、アルミキャストによる建築デザインパネル専門メーカーの
傳來工房副社長の橋本昇です。
ここ数年、建築家、設計事務所の皆さんから《キャスト回帰》と感じるような
色々な部位、多様な意匠のアルミキャスト(アルミ鋳物)の
ご用命をいただいております。
とりわけ、デザイングリル、デザインルーバーなど
アルミキャストの造形性の利点やコストメリットを生かした
設計意匠のご提案に大変興味深く、喜んでおります。
さて、現代建築分野でアルミキャストのデザインルーバーの原点とも
云えるのが38年前に竣工した「国立民族学博物館」の
エントランス天井ルーバーだと思います。
国立民族学博物館 1977
建築設計:黒川紀章都市建築設計事務所
エントランスロビー
天井デザインルーバー
材質:アルミ合金鋳物(AC3)
仕上げ:鋳放しバフ仕上げ
鋳造:株式会社傳來工房
手の指紋をモチーフにされた意匠は、
世界の文明や民族の力強い潮流を感じさせます。
傳來工房での製作にあたり、数多い曲線パネルの原型コストを抑えて
型を作るのかが大きな課題でした。
色々な素材、型製作方法など傳來工房で検討いたしました。
そして採用されたのは、厚手のゴム板を使った木型原型でした。
ひとつひとつのパネルの意匠曲線をゴム板を使って木枠にセットし、
それを鋳型用の型として採用し鋳造しました。
今でもこの国立民族学博物館のエントランスロビーに
初めて入られた来場者から天井を見上げながら歓声やため息が聞こえます。
《余談》お時間があれば・・・
大阪万博後のスイスパピリオン跡地横に
この国立民族学博物館が計画された時、
一人の学者が中心となり尽力された。
色々な逸話があるらしいが、
この博物館名を政府から
「国立民族博物館」と呼称を計画されたことに
「国立民俗学博物館」でなければならないと力説し
関係大臣、官庁を説き伏せた。
その人は、後のこの博物館の初代館長となる梅棹忠夫氏(1920−2010)
実は、梅棹さんは私の父方の親戚筋で
ご多忙の中、私の結婚式にも親族として参列頂き、
スピ―チまで頂戴した。
「世界中からガラクタを集めた国立の古道具屋の梅棹です。」と
ユーモアに溢れた自己紹介をされ、会場が沸いた。
「本来なら親族なので末席に座るべきところ高い席で失礼します。」と
挨拶されたことなどその時のことを今でもよく覚えており
大変有り難く、懐かしい。
合掌